この2019年も後半になって、ハイデッガーの「技術について問う」を紐解く意味はあるのでしょうか、の巻。

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この論文のもとは、1953年『11月18日、ミュンヘン工業大学で講演「技術への問い」、ハンス・カロッサ、ハイゼンベルク、エルンスト・ユンガー、ホセ・オルテガ・イ・ガセットらも聴講し、盛大なスタンディングオベーションが起こり、戦後ドイツでのハイデッガーの公開の場での最大の成功となった』(驚)ものらしいのです。なお引用はWikipediaに依ります。
邦訳は手軽に手に入るものが2種類あります。
平凡社ライブラリー「技術への問い」関口浩訳(2013年)
講談社学術文庫「技術とは何だろうか」森一郎編訳(2019年)
この2種の邦訳では、用語の訳語が異なります。どちらがよいかですが、みっちの意見では、「どっちもどっち、いずれにせよ一読して分かるような本ではない」であります。(笑)
この論文の主旨は、どうも「技術が進歩すると危険だよ」てことのようなんですが、それを語るにあたって、この語り口、まさにハイデッガーであります。読んでいて、さっぱり分からないのです。(笑)
最初に、技術とは何であろうか、という問いが発せられ、技術とは目的のための手段であり、また人間の行為である、という至極当たり前な定義が示されます。
まぁハイデッガーの論考がそんな簡単なもので終わるわけもなく、銀の儀式用皿を例にとって、四原因説を紹介した後、ポイエーシスとアレーティアが出てまいります。
ポイエーシスは、ギリシャ語で製作、創造、創作のことです。プラトンの「饗宴」に曰く、『いかなるものであれ非存在から存在へ移行する場合その移行の原因はすべて、創作です。したがってまた、あらゆる技術に属する製作は創作であり、…』とあります。
またアレーティアは、真実、真相、真理のことです。
ハイデッガーはポイエーシスとアレーティアの意味合いを、少々アレンジして議論を続けます。アレーティアすなわち真理を明らかにすることは、技術のもつ特性の一つであるとし、また現代技術は純粋なポイエーシスにあらず、とします。ギリシャ時代の素朴な創造からは、かけ離れた挑発的要素その他を持つ、というのです。
『現代技術の本質は、われわれがゲシュテルGe-stellと名づけるものにおいて示されている』
ハイデッガーの云うゲシュテルとはどういうものでしょうか。その特質は、こんな感じです。
・それ自身は技術的なものではない
・自然を用立てのために用立てる
・そのためには、人間もリソースの一つとして集めて利用する。人は利用されていることを特に意識しない、あるいはできない
・人に対して挑発的で、人に呼びかけ要求をする。また、現実のものとして明らかに見せ、立ちはだかる
はい、そして、『技術の本質との関係にどのように到るべきなのか、と問うのは、…いつでも遅すぎるのです。…自分のすることなすことが、至るところで、…ゲシュテルによって挑発されている者であると、みずからを…問うのであれば、遅すぎるということは決してありません。』と、こうです。
さらに「運命によってもたらされる」という概念がきます。ハイデッガーによれば、『歴史とは、歴史学の対象にすぎないのではなく、人間の行ないの遂行にすぎないのでもありません。人間の行ないが歴史的となるのは、運命に巧みに遣わされたものとしてはじめてなのです。』ゲシュテルも運命によって遣わされねば、現出しません。
そして、(人間の意志ではなく)運命によって遣わされるがゆえに、危機となる可能性がある、とこうなのです。
結局これは、現代技術がその裾野に至るまで、非常に巨大化・複雑化し、人間によって作られているのは間違いないのだが、その人間の個々の意志を越えたところで、様々な副作用が働いている、という事態を指しているものと思います。それにしても、どうしてまぁ、こうまで難しく語らねばならないのでしょうかぁ。(笑)
さてそれでは、この事態をいったいどうしたらよいのか。ハイデッガー先生は何かよい解決策をお持ちか。う~んと唸ったところに、ここで突如ヘルダーリンの詩が現れます。それも、こんなのが。
しかし、危険のあるところ
救うものもまた育つ。
えっなんだって、これって、真面目な論文じゃなかったのか、爺い舐めとんのか?!てなところなんです。(笑)まあしかし、考えてみれば、こういうような結論でも持ってこなければ、この議論は収拾のつけようがないですねぇ。
はい、てなところで、今日はハイデッガーの「技術への問い」を自己流に読んでみたのでした。この書は例によって難解であり、下手をするとみっちは全く読み違えている、という可能性もあります。お気を付けください。(笑)



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