Noism1+Noism0「森優貴/金森穣 Double Bill」が新潟・埼玉で開催~世界標準で闘い続ける両雄により日本のダンスは新時代へ

日本のダンスに新時代を画する予感がする。Noism1+Noism0「森優貴/金森穣 Double Bill」(2019年12月13日~15日 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館、2020年1月17日~19日 彩の国さいたま芸術劇場)は要注目だ。日本唯一の公立劇場専属舞踊団Noism(ノイズム)を率いる金森穣が、日本人として初めて欧州の公立劇場舞踊芸術監督を務めた森優貴を招聘し、それぞれが新作を発表。同世代であり、共に若き日から欧州で研鑽を積み、日・独と環境は異なるものの芸術監督を務め未踏の道を歩んできた二人が、ついに相まみえる。

■Noism、無事に契約延長

金森はモーリス・ベジャール、イリ・キリアンという巨匠に学んだ。欧州の第一線で活躍後に帰国すると、2004年以降りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館レジデンシャルダンスカンパニーとして設立されたNoism(ノイズム)の芸術監督を務め国内外で公演を行う。カンパニーや金森、副芸術監督の井関佐和子が名誉ある賞を受けるなど高評価を得ているのは周知の通り。しかし創設15年を前後して暗雲がただよう。Noismは3年ごとに新潟市と契約更新してきたが、市の財政難などの事情により2020年8月以降の活動が未定だったのである。でも2019年9月に2022年8月までの2年の延長が決まり、晴れて第6期(2019年9月~2022年8月)が始まった。
(左から)中原八一(新潟市長) 金森穣(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 舞踊部門芸術監督/Noism芸術監督) 仁多見浩(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 支配人)
(左から)中原八一(新潟市長) 金森穣(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 舞踊部門芸術監督/Noism芸術監督) 仁多見浩(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 支配人)

■新たな活動に向けて

新展開として、まず総称を「Noism – RYUTOPIA Residential Dance Company」から「 Noism Company Niigata」へとあらため、新潟の街を国際的に発信する。そして今までのプロフェッショナルカンパニーNoism1(ノイズムワン)、研修生カンパニーNoism2(ノイズムツー)による体制からプロフェッショナル選抜メンバーによるNoism0(ノイズムゼロ)を加えた3つの集団制へと変わる。 スクール開設やワークショップの開催といった地域貢献活動を積極的に実施し、国内の劇場・音楽堂とのネットワーク拡大に取り組むなどより一層充実した活動を目指していく。その一環として、りゅーとぴあ舞踊部門ではNoism 以外の公演も市民に提供することも課題とされ、金森以外の振付家の起用も望まれる中で、日本に拠点を移したばかりの森を招聘することになったのは巡りあわせだろう。Noism1が外部振付家を招聘するのは8年ぶりである。
Noism1『Fratres Ⅰ』(2019年7月) Photo:Kishin Shinoyama
Noism1『Fratres Ⅰ』(2019年7月) Photo:Kishin Shinoyama

■欧州で認められた森優貴の卓越した才能

森はハンブルク・バレエ・スクールへ留学・卒業後、ニュルンベルク・バレエを経て2001年から2012年までシュテファン・トス率いるトス・タンツカンパニーに在籍し、トス作品で主要ソリストとして活躍した。同時にキリアン、ウィリアム・フォーサイス、マッツ・エックなど当代一流の振付家の作品を踊っている。振付家としては2005年、ハノーファー国際振付コンクールで観客賞と批評家賞を同時受賞。2012年9月よりレーゲンスブルク歌劇場ダンスカンパニー芸術監督を務め、2019年夏まで7シーズン率いて毎年新作を発表した。
森優貴 Photo:Miyuki Kurosu
森優貴 Photo:Miyuki Kurosu

森作品は緻密な構成と繊細な質感の動きを持ち味とし、音楽と分かち難く結びつく卓越した振付によってイマジネーション豊かな世界が繰り広げられる。森は2016年にドイツの舞台芸術界の権威ファウスト賞の振付家部門候補となった。これまでにドイツのマンハイム国立劇場、オーストリアのチロル州立劇場、スイスのザンクト・ガレン芸術祭などから招聘を受けフルイブニングの作品を発表し、2008年に東京のセルリアンタワー能楽堂で初演した伝統と創造シリーズvol.1『ひかり、肖像』はパリ日本文化会館でも上演されている。
『Farben』リハーサル Photo:Ryu Endo
『Farben』リハーサル Photo:Ryu Endo

現在、日本人ダンサーは世界各地の劇場・舞踊団で踊っているが、海外で芸術監督・振付家として稀有な活躍を果たした森の偉業はもっと知られていい。金森はベジャールが創立した舞踊学校ルードラ時代に振付を始め、キリアンの下でプロの振付家としてデビューし、帰国後Noismを率い創作に励んで現在までに11ヵ国22都市で海外公演を行うという快挙を成し遂げているが、その彼が「同志」と認め招聘する特別な存在なのだ。
『Farben』リハーサル Photo:Ryu Endo
『Farben』リハーサル Photo:Ryu Endo

■森優貴×Noismの化学反応に期待!

森がNoism1+Noism0(井関佐和子)のために振付する新作が『Farben』(ファルベン)である。表題はドイツ語で「色彩」の意。森が当初関心を抱いたのは感覚質(クオリア)とのことで、そこから出演する12人のダンサーの個性を生かし、彼らとのクリエーションから受け取る「感覚」を大切に創作していきたいという。前記のようにNoism1が金森以外の振付家の作品を踊るのは8年ぶりとなるだけに彼らの新生面が見られそうだ。同時に森にとっても金森が手塩にかけて育ててきた舞踊団の踊り手と向き合うのは挑戦である。森の新境地となるだけでなく、Noismが築きあげてきた強固な身体性や独特のカラーがあらためて浮き彫りになるかもしれない。

森優貴/金森穣 Double Bill  森優貴インタビュー(long ver.)


■金森穣の新たなチャレンジにも注目!

金森は『シネマトダンス―3つの小品』と題し『クロノスカイロス1』(出演:Noism1)、『夏の名残のバラ』(出演:Noism0[井関佐和子、山田勇気])、『Fratres Ⅱ』(出演:Noism0[金森穣])を創作する。「シネマトダンス」とは「シネマ」と「ダンス」を合わせた造語で、遠藤龍による映像が大きな役割を果たすという。新メンバーも増えたNoism1に向けた群舞、ベテラン井関と山田によるデュエット、金森自身が踊るソロという変化に富んだ構成なのも興味深く、常に新たなチャレンジに取り組む金森の才気と実力が発揮されるだろう。

森優貴/金森穣 Double Bill 金森穣インタビュー(long ver.)


■「集団性」を強みに新出発

2019年10月、東京で行われた記者会見の席上、金森は「集団性にこだわりたい」とNoismの展望を語った。新潟に根差し、公立劇場専属のダンスカンパニーとして日々鍛錬を重ねることでしか生み出し得ない結束力が武器だ。「劇場文化100年構想」を掲げる金森率いるNoismにとっても、日本に拠点を移してからの初作品となる森にとっても今回は新たな出発である。世界標準で闘ってきた金森と森の創造力の凄まじさ、Noismというプロフェッショナルな芸術家集団による本気の踊りを体感してほしい。
『Fratres Ⅰ』(2019年) Photo:Kishin Shinoyama
『Fratres Ⅰ』(2019年) Photo:Kishin Shinoyama

取材・文=高橋森彦

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