「渋谷フクラス」に新たな観光を提案する「shibuya-san tourist information & art center」が12月5日オープン


観光をアートの視点から捉え直すshibuya-san art center

筆者は田舎に住んでいるのだが、たまにいく東京の渋谷という街の変化にはすこぶる驚かされる。特に駅周辺の変わりようは、またすごい。この2019年12月5日、渋谷駅西口に新商業施設「渋谷フクラス」の1階に「shibuya-san(シブヤサン)」という観光支援施設(ツーリストインフォメーションセンター)がオープンする。それがただの観光支援施設ではなく、ここに立ち寄ることで、きっと面白い新たな旅に出発できるのだ。
shibuya-sanインフォメーションセンター(イメージ)
shibuya-sanインフォメーションセンター(イメージ)

「shibuya-san」は文字通り「渋谷 + さん(敬称)」を組み合わせた造語。初めて渋谷に訪れる外国人にも親しみをもって呼んでもらえるようにという思いが込められている。ロゴマークもインフォメーションセンターのピクトマークである「i」を擬人化したものだそう。スマホなどで簡単に、いくらでも普通の観光情報が手に入る今の時代だからこそ、「shibuya-san」では、ツーリストがローカルの人びとと深くつながり、交わり、“シブヤの街の一員になれた”と実感できるような体験・交流の場を目指している。

■渋谷の一員になれる場所。“外国人目線”の「観光支援機能」

■アートをきっかけに世界と渋谷が交わる場所 「アートセンター機能」

■「夜間営業」により、渋谷の夜間観光を推進

■本施設の目の前のバスターミナルには羽田・成田両空港からリムジンバスが乗り入れ

などのコンセプトがあるが、spiceなので「アートセンター機能」に着目する。アートセンター部門の責任者は、江東区のティアラこうとう、福島のいわきアリオス、アーツカウンシル東京で活躍していた森隆一郎さんが務めている。森さんに、「shibuya-san」とどう遊んだらいいかを聞いた。
shibuya-sanアートセンター(イメージ)
shibuya-sanアートセンター(イメージ)
shibuya-san BAR(イメージ)
shibuya-san BAR(イメージ)

――「shibuya-san」のアートセンター機能はどんなものでしょうか。

 観光案内所は更新できるのか、新たな機能を持ち得るのかというテーマで、東急不動産さんとJTBコミュニケーションデザインさんがいろいろアイデアをブレストしていたんです。その中で、アートセンターを併設したらどうかと、アートに可能性を見出してくださった。観光客の方、街の方にとって旅の情報を得られるだけではなく、サードプレイス的な場として、あるいは思いも寄らないものと出会える場という設定がされ、そこに広い意味でのアートがコンテンツとして入ると考えてください。ただし舞台でいうブラックボックスでも、美術でいうホワイトキューブでもないので、いわゆる公演や展示ができるわけではありません。壁は全部ラックになっていて、そのラックの扉を跳ね上げた空洞に何かを展示することはできるかな。そして夜は可動式のカウンターが設置されバーになります。そういうものをすべて片付けて平土間にすることもできるんですけど、何をやるにしても狭いし、天井も低い。じゃあアートセンターとしてどんな機能を持たせられるかといえば、ロビー機能だろうと。狭くてもトークイベント、ちょっとした展示、ワークショップはできる。加えて「shibuya-san」をロビーに街に出てしまえばいいんじゃないかと。渋谷と言えば寺山修司の天井桟敷があった街でもありますし、例えば、そのDNAを受け継いで街中を使う演劇やダンスなどパフォーマンスをやるとして、その発着所にもできるなと思っています。「shibuya-san」は、何か旅の気配を感じつつも新たな表現に出会える場所を目指したいんです。

――そもそも森さんが「shibuya-san」にかかわることになったきっかけは?

 まず、駅前の屋台でアーティストが何かメニューを提供するようなアイデアがあって、街歩き演劇の指示書みたいなものが渡されるとか、小さなワークショップみたいなものを行うとか、そういうことがあれば、ただ情報を得るだけではなくその街ならではの体験もできる、ミニアートセンターみたいなものができるなと。その場での作品発表などは難しいですが、街で仕掛けられるようなアーティストたちと何か一緒にやれたらいいなと考えていたんです。それなら演劇だとか、美術だとか、音楽だとか関係ない。ありとあらゆる表現をしている人たちと面白いことをしたい、アーティストが何かしたいなと思ったときに、一緒にお手伝いできるような立ち位置にできるんじゃないかと。そんなことを話していたら、お声がかかったんです(笑)。

地域のオルタナティブなアートセンターと連携

――渋谷の駅前にそんな施設があることはすごいですよね。

 強みでしょう(笑)。渋谷駅前に自分がスペースを借りてアートセンターをやろうと思ってもとてもじゃないけどできない。でも駅の真ん前にオルタナティブなアートセンターあるという状況があるわけです。このチャンスは生かさない手はありません。

基本は連携です。つまり街の面白いところ、あるいは東京にあるオルタナティブなスペースと連携するハブとしての役割を持ちたい。具体的には、北千住のアートセンター「BUoY」、新御徒町のレジデンス施設「ALMOST PERFECT」、横浜・伊勢佐木町のオルタナティブスペース「The CAVE」、この3カ所とまず提携して、そこでやりきれないこと、プロモーションになること、渋谷の駅前でやったら面白いことをやりましょうと。この連携は今後も増やしていきたいんですよ。まずは小さな拠点同士のネットワーク、自立で頑張っている人たちのネットワーク、民間でやっているところのネットワーク、その後で公的なところとも連携していけるといいですね。将来的には国内、あるいはアジアくらいを見据えてオルタナティブなネットワークの一員になる、情報のハブになれればと思っています。こういう出会いを求めている観光客は少数でしょうけど、オルタナティブな観光をしたい、観光地は興味がないという人たちに「shibuya-san」に行けばレアな情報があるよという存在になっていれば、その層は確実に来てくれると思います。

――ネットワークのイメージを教えてください。

 渋谷にあるアート関係の場とはしっかり連携していきたいです。ミニシアターに関しては新宿と渋谷に集中しているんですよ。あとは各街にちょっとずつある。ライブハウス、クラブもめちゃくちゃ多いです。ギャラリーはそれほど数は多くはないかな。演劇に関してはシアターコクーンなど大箱がいくつかありますが、下北沢や駒場東大前などとアクセスすれば小劇場も見られる。今夏にできた「TKTS 渋谷」も追い風になって、エンターテインメントをまとめて見るなら渋谷だみたいな空気を構築できればいいなあと。そして将来的には日本の地方都市ともつながりたい。アジアの方はどうかはわからないですけど、欧米の方々は東京から静岡くらいは平気で日帰りするんですよ。日本は交通網が発達していますから、いろんな情報が集まっていることが重要です。
左から森、総合プロデュースの伏谷博之、「ALMOST PERFECT」のルイス・メンド、「BUoY」の岸本佳子、「The CAVE」の石神夏希、「ALMOST PERFECT」の岡田有加
左から森、総合プロデュースの伏谷博之、「ALMOST PERFECT」のルイス・メンド、「BUoY」の岸本佳子、「The CAVE」の石神夏希、「ALMOST PERFECT」の岡田有加

――観光のスタイルが多様化している中ではきっと需要もありそうです。

 今の東京は消費がメインの街。でも旅の本質が体験に、物からことへと移っており、渋谷を「こと」が集まっているという状況にしたいですね。その情報が集まっている「shibuya-san」自体で「こと」が起こっていて、それが体験できる場所を目指したい。渋谷って、演劇で言えば天井桟敷の寺山さんと唐十郎さんの状況劇場が渋谷戦争を起こしたり、山手教会の地下に渋谷ジァンジァンがあったりしたんですよね。掘っていくといろんな文脈が現れる。見えない線でつながっているものを見える化すると面白いかもしれません。現代アートではChim↑Pomがセンター街でネズミを捕まえて黄色に染めるみたいなことをやったのを始め、いろんなアーティストがいろんな試みをしている。それらに触れられるだけでなく、渋谷で働く方がそういうことを語れるようになればいいなあと思います。渋谷の地形は谷間だからいろんなものが沈殿している。それを掘り出し、取り出して、観光という切り口からはこのように見えるのかというようなことが発見できるんじゃないかなと思うんです。そのことで瀬戸内とか越後妻有のフェスティバルに出かけるようなライトユーザーでも気軽に利用できるようにしたいですね。
shibuya-sanの様子
shibuya-sanの様子
shibuya-sanの様子
shibuya-sanの様子
shibuya-sanの様子
shibuya-sanの様子

――観光にとっては「人」も重要なアイテムになりますね。

 「shibuya-san」がどんどん人びとのクリエイティビティを刺激し、ありとあらゆる人がここに集うようになる。そして人が集まってしまうという場づくりを試してみたいんです。そしてもう一つの可能性として、「shibuya-san」にいる人びとがなんかつながってしまうというのが理想です。旅先にそういう場があると、また行ってみたいって思うじゃないですか。その街の自分のベースだと勝手に思うとか、とりあえず1日の行動を考えるときにそこに行ってみるとか、そういう場所になるといいですね。

そして雰囲気づくりで言えば、誰がそこで働いているかも重要です。「shibuya-san」の特徴的なのは、働いているのが全員留学生、外国人なんです。それもサブカルや可愛いカルチャーが大好きとか、そういう子がコンシェルジュになっている。将来的に彼女らがアートセンターのスタッフとしても育っていくといいなと思います。キュレーションはできなくても、特定の情報にはすごい詳しいというふうになってほしいですね。
shibuya-sanインフォメーションセンター(イメージ)

――改めて森さんが感じる「shibuya-san」の意義を教えてください。

 ヒカリエがある場所って、かつてプラネタリウムや大きな映画館が入っていた東急文化会館だったじゃないですか。東急さんは駅の前に商業施設ではなく文化施設をつくるという発想を持っていらっしゃる。「shibuya-san」は小さいですけれど、その思いも大事にしていきたいなあと。逆にアート側のポテンシャルをどのように見せていくかが勝負です。場所が小さいから集客ではない。30人入って満杯ですってインパクトありますか? それよりもこんなふうに街が使われるんだ、それを「shibuya-san」が仕掛けているんだということをやってみたいですね。

オープニング企画はL PACK.による芸術家売屋図『手考足思』

shibuya-sanインフォメーションセンター(イメージ)
shibuya-sanの様子
shibuya-sanインフォメーションセンター(イメージ)
shibuya-sanの様子

オープニングイベントとして12月5日(木)に「shibuya-san Poetry Cafe session:0」(MC:ロバート・ハリス)を、オープニング企画として2019年12月5日(木)~12月26日(木)に芸術家売屋図(アーティストバイヤーズ)『手考足思』(アーティストセレクト:L PACK.)を開催する。
shibuya-sanインフォメーションセンター(イメージ)
ロバート・ハリス
shibuya-sanインフォメーションセンター(イメージ)
L PACK. Photo : Futoshi Miyagi

​[施設概要]
■施設名称 shibuya-san tourist information & art center
■所在地 東京都渋谷区道玄坂1-2-3
■事業主体 東急不動産株式会社
■運営会社 株式会社JTB コミュニケーションデザイン
■所在地 東京都渋谷区道⽞坂一丁目2番3号
■サービス 観光情報案内、荷物預かり・配送、空港リムジンバスのチケット販売・待合、外貨両替、渋谷体験プログラム、ドリンク提供、アートセンター、イベント実施
■営業時間 10:00~23:00 ※一部サービスを除く
■開業 2019年12月5日

[スタッフ]

事業推進サポート/運営企画 株式会社JTBコミュニケーションデザイン
総合プロデュース 伏谷博之
内装デザイン 青木淳
ロゴデザイン 中條正義
ネーミング/コピーライティング 高木基
ツーリストインフォメーション責任者 石川雄大
アートセンター責任者 森隆一郎

取材・文:いまいこういち

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